「1923年関東大震災朝鮮人・中国人虐殺」103周年記念追悼大会
プログラムの「北米からの報告」にて発表されました。
追悼と連帯のメッセージ
2026年8月31日 タートル・アイランド(カナダ・アメリカ)にて
「1923年関東大震災朝鮮人・中国人虐殺」に関して日本国家は、重大な国家犯罪であるこの事件の調査さえ拒み、犠牲者たちの尊厳を否定するのみならず、歴史を否定する勢力を野放しにすることで、そのような大惨事を生む要素を今なお温存しています。私たちはその残虐性を、今日改めて痛感しています。
この現実を支える人種差別の構造は、いまや在日コミュニティに加え、クルド人、ベトナム人、ネパール人など「新」移民や難民をも虐げています。私たちは皆さんと連帯し、イスラエルであれアメリカであれ日本であれ、時効のないジェノサイドという犯罪に対する調査と真相究明を求めます。支配者が用いる手口は共通して、デマなどのフェイクニュースと、警察・国家・民間人による不処罰の組み合わせです。私たちは、殺戮的なナショナリズムや人種差別、それらを正当化する極右思想が成立し得ない世界を築きたいと願っています。それは普遍的な平和の必須条件であり、私たちが切望する未来のビジョンです。第一歩は、歴史的事実の忘却や否定を拒むこと。第二歩は、集団・時代・地理の距離を超えて歴史から学ぶこと——とりわけ問題の根源を正しく分析し、その上に連帯の根拠を見出すことです。国際的に加担しあって強化されてきた不当な権力に対抗するには、強靭な連帯を通してこそ正義は実現できると考えるからです。
では、北米側にいる私たちは今、何をすべきか。まず取り組んでいるのは、関東大虐殺の記憶が、今日の日系ディアスポラ——とりわけ「(ヨーロッパ諸国に)侵略・占領された入植者植民地」と呼ばれる「北米」に住む人々——にとってどのような意義を持つかを、広く議論することです。私たちは現在、「日系人」という言葉が具体的に誰を指すのかを再定義する活動をしています。この運動は、北米における在日コリアンらによる数十年の組織化の系譜に連なるものです。北米での日系人の歴史は「一般の日系アメリカ人」の物語ばかりが強調され、同じ「日本」をルーツに持つ在日コリアンや被差別部落民などマイノリティの移民史は排除されてきました。彼ら彼女らを消すことで、日本国家・社会がその人々に加えてきた不正義の歴史も、都合よく消されているのです。結果として、私たちが黙っていれば、まるで「殺菌処理」されたバージョンの日本史にしか触れられません。
第二次世界大戦中、アメリカ国家政府は12万の日系人を、属性のみを理由に「敵」とみなし、国家保安の名目で強制収容(事実上の集団投獄)しました。このトラウマと屈辱の記憶に加え、私たちの多くは北米における人種差別、オリエンタリズム、白人至上主義による国家暴力を身をもって体験してきました。こうした体験はアメリカ社会の集合的記憶に少しずつ刻まれ、私たち集団の人間性を回復し、偏見や差別を解消する一助となっています。
その反面、日本の植民地侵略の犠牲者たちや、在日コミュニティが受けてきた抑圧と抵抗の歴史については、学校や地域社会でほとんど教育がなされていません。私たちが取り組みを通じて学んだのは、日本国家による東アジア侵略の歴史を含む植民地主義・人種差別・家父長制と自ら向き合わなければ、日本をルーツに持つ私たちは、知らぬ間に歴史の忘却に加担させられかねないということです。さらに、アメリカが戦後レジームを形成する過程で日本の過去を曖昧にしてきた責任についても、米国市民権を持つ日系人は「知らなかった」では済まされません。日米両国の歴史を学ぶことなしに、正義の側に立つ生き方を全うすることはできないのです。
思い返せば1952年、米国は有色人種移民だけに帰化申請を禁じていた差別法を撤廃し、日本人移民も白人移民同様、米国市民になれるようになりました。米国社会は国策として、戦時中の強制収容後、国家謝罪と和解を通じ、かつて敵とみなした日系人を「模範的なマイノリティ(従順で勤勉で文句を言わない)」という偏見のもとに戦後リベラル・デモクラシーの秩序に吸収しました。ひるがえって日本は同年、在日朝鮮人や台湾人にかつて押し付けていた日本国籍を一方的に剥奪し、事実上無国籍状態に追いやりました。大日本帝国の敗北と米国占領後、在日朝鮮人・台湾人、そして日本の単一民族言説に飲み込まれたアイヌや沖縄の先住民族たちは、日本の国家責任放棄という結末を強いられ、日米同盟が形成した環太平洋のリベラル民主主義秩序から排除されたのです。同年に、過去の国家犯罪に向き合わぬまま戦後レジームを国内外で築く動きを日米両国がとったことは、決して偶然ではないと考えています。
冷戦後のアメリカ帝国の覇権を中心とする世界秩序に対し、私たち日系ディアスポラは、「模範的マイノリティ」という神話と「『日本』の単一民族神話」の両方に抵抗する立場に置かれています。関東大虐殺の記憶は、北米で私たちが関わってきた正義の闘いを、日本や東アジアにおける正義の闘いと結びつけることによって、初めてその意義を全うし、強靭な連帯を促すと確信しています。今までも、世界的な反帝国主義・反植民地主義運動の高まりは、互いの闘いを理解し合い、問題意識と分析を共有し、勝利に向けて共闘することを通して可能になってきたことを私たちは今一度想起しています。
日本政府に責任を追及するために、日本の団体や個人がたゆまぬ努力を続けてくださっていることに、心より感謝申し上げます。1923年関東大震災朝鮮人・中国人虐殺の歴史は、みなさんの多大な犠牲の上に私たちが享受する、私たちディアスポラにとっても貴重な集合的財産だと思っています。世界中の日系人コミュニティを代表して、私たちは皆様と連帯し、いかなる集団に対してもジェノサイドが許されない世界の実現に向けて尽力してまいります。
最後に、犠牲者のご遺族の皆様に心より追悼の意を表します。そしてご先祖様のご冥福をお祈り申し上げます。そして、その思い出が、私たち全員の絆と力の源となりますように。
連帯の敬意を込めて、
日本をルーツに持つ日系アメリカ・カナダ人ディアスポラ一同より
(日本・サンフランシスコ在住 金美穂 代表)